496 田中慎弥 「共喰い」
- 2021/04/08
- 23:19
【共喰い】中編小説なのに、登場人物も限られるのに、何だかもの凄い世界を見せられた、という感覚が強く残った。「川辺」に住む17歳の遠馬は、今日も幼馴染で一つ年上の千種の家に寄ってセックスをしている。遠馬は父の円と、父の女の琴子さんと住んでいる。遠馬の母の仁子さんは、橋を渡った向こう岸で魚屋を営んでる。義手の右手を使って魚屋をしている。遠馬は父がセックスをする時に相手の女性を殴る事を知っている。琴子さん...
407 田中慎弥 「ひよこ太陽」
- 2019/08/21
- 23:48
完全に私小説だった。久し振りに、「あぁ~、太宰治も自分のこんなことを書いていたかなぁ」と、懐かしく思い出した。2018年の1月~2019年1月の月刊「新潮」に書かれた、連作短編集。だが書かれているのは、恐らく2016~2017年のこと。何故かというと繰り返し「現職の大臣が核保有を否定しない、などと言っている」と繰り返し触れられているから。稲田朋美防衛大臣が2016年に言った「野党時代に訴えていた「日本には核保有が必要」...
254 田中慎弥 「美しい国への旅」
- 2017/02/03
- 00:36
田中慎弥初めてのSF冒険小説、って聞いて読んだけれども、余り頭に入ってこなかった。私の精神状況が悪かった事が起因しているかもしれず、以降を読む方は、少し差っ引いてご判断を願いたい。近未来の日本、ゴミ為のような街にタイチは母親と住んでいる。自分の年齢も知らないが、多分12か13歳だと思っている。周りは「濁り」が空気にも水にも蔓延していて、水も食べ物も母が手に入れてくるボトルとチューブだけだし、近くの年配者...
215 田中慎弥 「田中慎弥の掌劇場」
- 2016/09/19
- 20:37
2008年芥川賞田中慎弥の、超ショート・ショート集。一編ほんの数ページほどの中に、毒や華、不気味さや綺麗、悪意や狂気、オチャラケやらシャッターチャンス、逆転や入れ替わりなどなどがふんだんに仕組まれている。またこれらのテクニックの外で、「田中慎弥独自の、物事や人・世界の捉え方」を垣間見れるところも勉強になる。この「捉え方」は、どうも一朝一夕には積みあがらないものだから、参考にする人が見つかるのは儲けもの...